【制作秘話】『リバース』
さようならの色はちゃんと、透き通っているかしら?
変わりゆくプリズムに濁りそうなとき
鼓膜を外して、私を聴いてね
コピンクス!は夜そして星がテーマ。
30秒『リバース』の話が挙がる時点で、コピンクちゃんとの楽曲制作が最後なのはわかっていました。
それをふまえて、また新しい曲をフルで作ることになりました。「明け方の観覧車」をモチーフにしてほしい、と番組プロデューサーさんからのオーダーでした。
一番難しかったです。明け方を連想させながら、主軸の閃光・瞬き・キラキラは外せないなんて…。
今回『リバース』というタイトルを決めたのは私でしたが、「観覧車」というモチーフは浮かばなかったので、もうどうやって書けばいいのかパンクしていました。
いつも印象に残る単語を入れようと思っていたので、今回はサビに「プリズム」を、途中に「イリンクス」を選びました。
『最高視感度』の元となった最大視感度はお手上げってくらい意味がわからなかったのですが、「プリズム」はよく耳を澄ませば日常でも聞く機会のある言葉でした。
「イリンクス」はなかなか聞き慣れない言葉だったかもしれませんが、フランスの社会学者のロシェ・カイヨワが【遊び】の定義を四つに分類したうちの一つを指します。モチーフに「観覧車」とあったので、遊園地のことを想像していたらロシェが提唱したこの「イリンクス」という単語が浮かびました。大学行っててよかったなーと思いました。そういえば「コピンクス!」と語感も似ていましたね。
・リバースのリバース
コピンクツイッターで特に多かった質問やご意見は、三十秒バージョンと歌詞がかなり違うことです。これは確かに、『カリーナノッテ』のときも変更がありましたが、それよりも全く別物といってもいいくらいに変えました。言い訳させて下さい!
まず、三十秒バージョンはオープニング用にいつも直前に時間のない中で作るのが通例です。当然ですが、一般的には作詞より作曲のほうが時間も労力もかかります。依田さんの手を煩わせないようにいつもなるべく早くと意識してしまうので、深く考える時間が今回は特にありませんでした。
そしてもう一つ、私はゲッターズ飯田さん監修の楽曲『チヨコレイト』制作のときにお世話になった大手レコード会社の方に歌詞のセオリーを教えてもらっていたことがあります。
それで番組プロデューサーさんが、知らない間にその方に三十秒verの歌詞を見せていたようで、クソメタに言われたそうです。「今まで見てきた曲の中でも一番酷い歌詞だ」とご指摘いただいたみたいで…。
悔しいとかの私の感情は抜きにして、こんなことじゃコピンクちゃんの最後の曲に、いくらなんでもその道のプロの方に酷評されたものを歌って欲しくないと思いました。
なので、ちゃんとまるまる書き直させて下さいと頼み、みなさんも快くOKして下さったので、その後時間をかけて書かせてもらいました。
・曲に関して
そしてこの曲は、今までのコピンク*楽曲と違ってメロディーが出来上がってから詞を書く順番で作りました。
今までと違って、嫌な言い方をしたら「ごく一般的でありきたりなやり方」でしたので、最初はスタッフさんから「え〜面白くない」みたいな反応がありました。
でも詞先より正直メロ先のほうが、正直やりやすかったです。私だけじゃなかったみたいで、依田さんも後々そう仰っていました。
「やりやすい」というと楽にやったみたいで語弊があるのですが、一番シンプルに進んでいたのではないのかな…と思っています。
あと、依田さんから頂いたデモを聴いたときに、イントロのオルゴールの音がきれいだなぁってずっと思っていました。なので歌詞にも「オルゴール」という単語は絶対に入れようと心に決めたことが記憶に残っています。
それまでコピンク*楽曲では詞先でしたので、歌詞のないメロディーが入ったデモを依田さんから頂くのは初めてでした。
コンペに出したり、他のところで歌詞を書く機会をいただくとそれが当たり前なのですが、デモだけでこんなに感動したのは今までありませんでした。これが最後だとわかっていて、そんな内容のものになるとわかっていたのも手伝っていたのかもしれませんが…。
ちゃんと今までのコピンク*楽曲の雰囲気はあるのに、それまでにないくらい切なさがぎゅっと詰まっていました。アルバムに収録されたり配信されている出来上がった曲も好きですが、ある程度まで作り込まれているけれど声も言葉も入っていないまだピンク色ではない真っ白な『リバース』も好きです。
よくシンガーソングライターの方が「メロディーがそのまま言葉になって、言葉がそのままメロディーになる」みたいなことをおっしゃっていますよね。なんかそんな感じで、するっと書けました。たくさん悩むことはあっても、無駄に焦ったり不満を抱いたりはしませんでした。
私やスタッフさんにしか無い、そんな真っ白な『リバース』が自分のiPodに入っているのはなんだか嬉しいような気もします。依田さんの曲は本当にかわいくて切なくて、キラキラしていて大好きです。
あとは、コピンクには松田聖子系のかわいいものが似合うんですけど、さよなら系だとどうしても中森明菜っぽい歌詞になっちゃうのが一番悩みました。
逆に「さようなら」をすごくプラスにプラスに書こうとすると、まだ私にそんな実力がないから、どうしてもよくある卒業ソングとか掃いて捨てるほどあるうすっぺらいものになってしまいがちなのが難しかったです。
切なくて悲しいはずのことをプラスな意味で、でもありきたりすぎても嫌だなぁ~って思っていた記憶があります。
そこで、いっちばん最初の、『リバース』第一稿を披露しようと思います。
どうでしょうか?なかなかダウナーですよね。
コピンク*楽曲というより、かなり我が出てしまっているなぁ…と、今見直すと猛省しています。黒歴史って認めたら終わりです。
とはいえ、今のリバースの元になったものなので、共通するものがいくつかあります。私が書くものは悲しみの塊みたいなものばかりだから、それを上手く裏返すとコピンクちゃんっぽくなるんだと思っています。
まだこのときには「観覧車」というモチーフが出ていなかったので、もっと身近で普段の生活にあるものを使おう!と考えていたのを覚えています。あとは女の子の鞄の中って小宇宙だなぁって、このときよく考えていたのもありました。
コピンク*ではかなり自由にやらせていただいているので、普通のアイドルや女の子が歌うポップスには無いようなものが書きたくなり、じゃあ鞄の中身と女の子のテーマでいこうかな!と思っていました。
こだわり抜いて選んだ自分を助けてくれるモノにだって、いつかはお別れの時が来てしまう。単純に飽きてしまうのか、見た目がぼろくなってみっともないからなのか、モノとして使えなくなってしまうのか、存在自体を忘れてしまうのか、仕方なくなのか、失くしてしまうのか、壊してしまったのか…理由はたくさんあるけれど、誰にでもどんなものにも終わりはありますよね。
道具と言ってしまうと色々と誤解されてしまうし、もちろん道具なわけありませんけれど、人や物事のお別れもそれと似たようなものだと思っています。
個人的に「準備の足らない自分嫌いになる」のあたりが好きだったのですが、コピンクちゃんはいつでも準備ばっちりだし、自分を嫌いになってほしくはないなぁ…と思い、今のBメロの歌詞になっています。
この『リバース』のデモを聴きながら書くとき、いつもBメロから書き始めていました。何かが始まる予感がしていて、あのBメロがすごく好きです。(というかどんな曲でも、基本的にBメロが好きです)
モチーフが「観覧車」に定まってからも、Bメロから書き始めたくらいです。
観覧車だけじゃなくてエスカレーターとかも、今では何気なくできてしまうことですが、小さいときに乗り降りのタイミングがよくわかりませんでした。やっぱり慣れるものですけれど、あの一歩って最初はとてつもなく恐ろしいことだったなぁ…って。
新しいことをするとき、あのタイミングの読めない一歩に似たような気持ちがあると思うんです。コピンクちゃんはこれから新しいことを始めるから、観覧車をモチーフにするなら断然こうでしょ!って勢いで書いたものから、曲全体へ広げていきました。ここだけは後々から直すことはあっても、初めに苦労した記憶はありません。
というか、すごく不思議なんですが、こんな第一稿を今の『リバース』歌詞に書き直すときに、確かに色々と悩んだけれど辛く苦しいことはなかったんです。
さっきも書きましたが、「よし、もう一回あのデモを聴こう」と切り替えられたというか…不思議な体験でした。他のものは毎回頭抱えているのに。
あんなに不安にならない曲とは、きっとこれから先もなかなか出会えないんだろうなって思っています。これからは…メロ先がいいな………ねぇ依田さん……番組プロデューサーさん……。
こんな風に紆余曲折を経て、今の『リバース』に生まれ変わりました。
やっぱりさすがにこれではコピンク*の世界には合わないなぁと自分でも思いつつ「くるくる」という単語とかは生かしたり、いっぱい悩んだけれどすごく楽しかったです。
コピンク*はいつでもキュートでポップでキュンキュンが一番だと思っているので、結構ここから変えていくのは大変でした。たとえば、歌詞を文字だけで読んだときにも、「恐ろしい」「醒める」などのマイナスの印象がないように表記をひらがなに変えたり。
個人的には、キュートでポップでキュンキュンで、そこにちょこっとだけ、気付かないくらいちょこっとだけ、毒やアイロニーがあると一番かわいらしいなぁと感じます。
やっぱり女の子はかわいいだけじゃなくて、ちょっと悪いこと考えていますからね…それがまたかわいいんですけどね…。
そして今回の『リバース』では、コピンク*の楽曲プロデューサーである高橋秀之さんがミュージシャンとしても、参加して下さっています。高橋さんは今は他にもたくさんのアーティストを手がける音楽プロデューサーですが、もともとはベーシストで、美空ひばりさんのコンサートでも、バンドメンバーとして弾いていた方です!
その他ストリングスやリズム隊の楽器レコーディングにもお邪魔させてもらったのですが、やっぱり高橋さんもその時が一番かっこよかったです。高橋さんも「やっぱりベースを弾くのが一番楽しい」っておっしゃっていて、ついにリバースで、生音が揃いました。みんなそれぞれの一番得意で一番好きな分野で表現ができた曲です。
・タイトル
前までみたいに造語であったりはしていなくて、すごくすごくシンプルですよね。『カリーナノッテ』『最高視感度』『兎tocome』と続いて、じゃあ次はどんなの?ってあって、『リバース』って…比較したらちょっとシンプルすぎかなって思っていたのですが、私なりにはこだわりもあります。
リバースとカタカナにした理由もちゃんとあります。
最初はRe:verseやRe:birthなどの案も確かに出たのですが、ある一つの英単語に決めてしまうと意味がそのまま定まってしまうからでした。せっかくの同音異義語なんだから、そのままカナカナで!と決めました。
そしてアルバムに収録された曲順も、これはスタッフさんが決めたのですが、すごくいいな〜って思っています。
曲の数からいって完全とは言えませんが、リバースを中心にちょっとシンメトリーっぽくなっているのが好きです。
・【リバース・楽曲に関して】
依田さんのメールをそのまま載せます。
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曲先で作る事になったので、スタートはかなり自由でした。
最初に作る時に自分の中で決めたのはコピンクちゃんの声を高音ではなく、彼女が一番いろんな表情を出しやすそうな中域~低域をたくさん使ってみようかなと。
とはいえ、高音も透明感や伸びがあって素敵だから、サビではやっぱ気持ちよく歌い上げる為に使ってしまうのですが。
レコーディング現場で、彼女が「今はリバースが歌っていて一番気持ちよいかも」的な事をチラッと言ってくれた時には嬉しかったのを覚えてます。
番組Pからは「お別れの切なさと、未来への輝き」のイメージでいきたいとの要望でした。
現実的なお別れというよりも、成長期の終わり、少女期の終わり
みたいなイメージだと解釈は出来たので、ある意味「さよなら」の歌にはなるだろうと。
コピンクス!の番組OPアニメの構想を考えていて、コピンクちゃんが何かを決意して凛々しく立ち向かってゆくコンテを書いた時に、だいたいの方向性が自分の中では固まりました。
なので、あとは切ない部分もあるけど、前向きな感じで終わらせたいな、という事だけ意識してコードやメロディを決めていきました。
なので、結果として静岡のイベントステージで彼女が笑顔でコピンクちゃんを卒業すると言っていた事が、リバースの本当のアウトロになってる感じだと思います。
児玉さんと番組Pが歌詞の進捗をやりとりするのを一部見ていて感心したのは、大人(おっさん)の思い描く成長期の終わりとまだ若い児玉さんのそれとは、見解が微妙に違うんだな、という事です。
やはり基本的に(自分も含め)おっさんのほうがどうしても美化して考えてしまうし、若いと若いで、身近すぎて、そんな美しいものじゃないよ、という不安定さがあるんだなと。
なので、最終的にあがってきた歌詞で
「ありがとう」などのストレートな前向きな言葉と「足元が浮つく、目のが覚めたような~」という、少し苦みのある響きが同居したポップで切ない歌詞に仕上がってきたので、うまくバランスがとれてるな~と改めて思いました。
児玉さんはある種の同世代の気持ちを、番組Pはポップスとして成り立たせる大人の意見としてたぶん切磋琢磨されたんだと思います。
あと途中で番組Pが「夜明けの観覧車」というイメージをおしゃってまして(彼はイメージの人なので…)
何かが終わった感じと、何かが始まる感じを感じさせるイメージ
つまり
少女期からの離別と、まぶしい未来への期待と不安
という事を思いついたんでしょうね、言い得て妙だと思いました。
ジャケもそのイメージを入れてくれ、との事でそうしました。おかげで統一感をもって物事が進んでいったのかもしれません。褒め過ぎかもしれませんが。
毎回、歌のレコーディングはとてもスムーズで、リバースの時もそうでした。
おそらく少ない時間の中でもきちんと練習してくれてる事と、あとは天性の感の良さなんでしょうね。
たわいも無い会話をしていると、やっぱまだ若くてで可愛いなと微笑ましく思う事もありますが、ブースに入って歌ってもらい、こちらはトークバックで指示したりしてると、年齢とかはまったく忘れてしまいます。
感が良いので阿吽の呼吸もできるし、煮詰まっていったん休憩する、とかは今まで一度もなかったです。
彼女が「Ah~」とか色んなキーで歌ってる
声素材集とかほしいなーといつも思ってました。
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・コピンクリバースデー
依田さんも書かれていましたが、レコーディングは…もう毎回のことで、コピンクちゃんは3テイクで終わってしまうからものすごい大変だったなんてことはありません。
他の曲よりも、とびきり優しく寂しく切なく前向きな声で歌ってくれました。もうコピンクちゃんを信頼しているので、別に歌詞の意味だとかを本人に話したりはしていないんです。それどころか、みんなが思っていたよりの何百倍も声に表情を持たせて歌ってくれました。
あとで本人からきいたのですが、レコーディング前に相当歌詞の意味だとか考えてくれていたみたいでした。もうこちらが感謝しかありません!そんな風に真摯に向き合ってくれるなんて、歌詞を書いていて本当によかったと思えます。私は書くことしかできないから、何よりも何よりも幸せに思えます。
3/2のスペシャルライブで、コピンクちゃんがステージ上なのに卒業のコメントではすごく正直に自分のことを話してくれましたね。
変に媚びて「コピンクのままがいい〜」とか言われるより、心の内を正直に言ってくれて、何よりも嬉しかったです。そのための曲と詞だったから、本当に。
『リバース』の歌詞を書かせてもらえてよかったなぁって、ずっと思っています。
今思い出してみると、『リバース』のときは相当悩んでいたわりに今までで一番熱中して書いていたので、
こうして色々書くとなると、「いいものを書きたい」の一心でやっていました。
コピンクちゃんがこうだからああだからっていうのも、確かに最後の曲だっていう認識もありましたけど「最後だからよりよいものを!」ってずっと考えていました。
コピンクちゃんとの別れは、30秒verを作る時に既に決まっていました。昨年9月の時点で配信日が決まっていたそうです。
というよりも、期限が決まってしまったので、リバースの配信日となった1/30までが一番長く今のスタッフで楽曲を制作していられる期間でした。
うおー!力の限り書くぞー!と燃える私、普段あまり熱く語らないけれどやっぱり素敵な曲を作って下さった依田さん、コピンクちゃんというキャラクターに思い入れが一番深く、ちょっとセンチになっていた番組プロデューサーさん、みんな色んなタイプだからこそ面白く、そして楽しく作ることができました。
そしてまた今回も、そんなこだわり屋さん達のエピソードがあります。
『兎tocome(feat.コピンク)』のとき、「靴の中なら隠していいでしょ」の一文のためにコピンクちゃんの靴を見せるように書き直したということがありました。
今回の『リバース』のジャケ写では、もともとリバースのジャケ写のコピンクちゃんはこちらを向いていませんでした。
前向きに、過去を振り返らずに進んでいく彼女を描いたそうです。
でも、それに番組プロデューサーさんと依田さんがさみしくなっちゃったみたいで、イラストを担当された方に書き直してもらったみたいです。それが今の、こっちを向いて微笑んでいるコピンクちゃんのジャケットなんです。
あの笑顔、切なくていいですよね。
みんなのリ・バースデーソングになるといいな。
次回、『コピンクス!一言集』と3/2に行われたスペシャルライブについてをアップして、この『コピンクス!メロディーズ~star chart~』の制作秘話をおしまいにします。
『リバース』が収録されている『コピンクス!メロディーズ~star chart~』は、アップフロントワークスより発売中です。
2013年3月28日