児玉雨子 -KODAMA Ameko-

KODAMA AMEKO
since 2011/12/20/23:43

go-drop

mail

【制作秘話2】「最高視感度」

back

ひとつ、謝らなくてはならないことがあります。


この楽曲は番組プロデューサーさんからはかなり自由にやってもいいと許可が降りましたので(笑)、歌詞に関してかなり複雑で意味わからないものになってしまい、本当にごめんなさい。

とはいえ、絶対に外したくないのは第一にキラキラ感、閃光のような煌めき、永遠の瞬き。
キーワードというより、コピンク*楽曲の中心に通るこの一本の太いテーマだけは、絶対に絶対に外さない条件で自由にやって、十代の感性を今のうちにぶつけておきなさいと言われました。ちょうどこの時ぐらいから歌詞のセオリーについて学び始めていたころでしたが、これだけは理論も典型にもはまらないでやっていい、むしろはまらないで!と言っていただき、そのお言葉に甘えに甘えて理論もへったくれもないものを書かせていただきました。
それに、この時には近松門左衛門にハマっていたので、見よう見まねでレトリックに挑戦してみたりも。レトリックって言っていいのかってレベルですが。

作曲の依田さんは音楽的なことでコピンクちゃんを支えてくれました。私は書くことしかできないので、同じ十代(とはいえ十代前半とギリギリ十代の差は大きいですが)、同じ女としての目線で、彼女がいつか大人になったときに喜んでくれる歌詞を書いて支えになればと思い、コピンク楽曲は取り組んでいました。

 

 

・冷やしかき揚げ蕎麦曲

こちらの曲は詞が先でした。
好きにやりなさいと言われ、好きに書き散らしたデータを依田さんに送りました。依田さんもその好き勝手な量に驚かれたそうです。
「超思いの丈を詰め込んでるじゃん!と思った記憶あります」って!
正直、この『最高視感度』は本当に思いの丈どころの騒ぎじゃないくらいの重すぎる思いを込めたものです。でもそのまんまじゃあ何の捻りもなくつまらなくて、なにより素人が何様のつもりだよって感じですし、コピンクちゃんへの気持ちを表現を変え言葉遊びをしてぼやぼやにしたものです。
そんな、かなり思いが重い歌詞を、依田さんの魔法のようなメロディでポップスとして成り立たせて下さりました。きちんと譜割に合うように、助詞を取ったり表現を更に変えて省略したり…。この曲は特に、依田さんと番組プロデューサーさんを困らせてしまったと思います。なるべく歌詞をカットしないように、でも盛り込みすぎて曲として破綻しないように、そのバランスをとる為に依田さんの頭を抱えさせてしまいました。

仮歌を入れるまでだけでもこんなに周りを悩ませて、いざコピンクちゃんに歌ってもらうとなると…作曲を担当されている依田さんが心配されるのは言わずもがな、自分で好きに書き散らしておいて、実は飛びたくなるぐらい私も不安になっていました。
「完全に私が足を引っ張った!」と…。
「これだから大人の『やっていいよ』を鵜呑みにするな!」と…。
レコーディングが始まるまでは本当に申し訳なさでいっぱいでしたが、レコーディングが始まると彼女のブレスの入れ方や滑舌が絶妙で、綺麗に流れるような歌い方でした。安心して録音していた感じを憶えています。
ここでもコピンクちゃんのエピソードがあるんですが、歌い方というか感情の込めどころとかを一応伝えてほしいと言われているので、私もレコーディングに毎回お邪魔させていただいているんです。
でも、彼女のペースを乱したくないので、最初から意見するよりも何度か歌ったあとに「一応こうして歌ってみてください」っていうスタンスで行こうと思っていたんです。

ここでいつもコピンクちゃんの伝説が…というか才能が炸裂するんです。
いや、見えない努力なのかな。

たとえば今回の『最高視感度』ですと、「すくってよ 君ならもっともっとできるから」のところ。
彼女、こちら側が何も言わなくても、想像していたのよりも何倍も何十倍も心を込めて歌ってくれました。演出的な歌唱指導なんて誰もしていないのに、いつもいつもどの曲でも、歌唱にしろ演出にしろ周りの期待をそれ以上の地点でひょいって越えちゃうんです。明るい曲と切ない曲の歌い分けまで完璧にやってのけてしまうので、コピンク様様です。
スタッフ一同萌えておりました。

音楽的なことだと、『カリーナノッテ』に続いてこの『最高視感度』をテンポの速い駆け抜けるような疾走感溢れる曲にする事は、依田さんと番組プロデューサーさんとで意見が一致していたそうです。
ストリングス入れたり生ドラムの入れたりするのも、元々依田さんの好みだったみたいですが、これも『カリーナノッテ』に引き続き踏襲しようと話が固まっていったみたいで。
この感じを決めたあたりで、コピンク*楽曲の方向性は音楽的にも歌詞のテイストも一本筋が通ったものになっていきました。

このお話を聞いたとき、なんでこんなさわやかで疾走感がある音にこんな重い歌詞を…と、また飛びたくなりました(笑) まるで、冷やしかき揚げ蕎麦みたいな曲です。さっぱりしているように見せかけて、実は脂っこくて胃に来るような曲。

ちなみに、この時番組プロデューサーさんがピアノの音がある音楽にハマっていたので、デモにはなかったイントロに、最終的にはピアノの音が加わりました。私もわりと鍵盤がしっかりしている曲が好きでしたので、完成した曲を聴いたときは感動しました!
この『最高視感度』だけじゃなくコピンク*楽曲には随所に番組プロデューサーさんの直感的な発想があって、たまにわけがわからなくて迷惑なときもあります…(笑)

 

 

・タイトルについて

タイトルの元となった用語、最大視感度のことをKmと表すそうです…。

番組プロデューサーさんと曲の打ち合わせ帰りの電車で、光に関する用語を色々とウィキペディアで調べていて、これいいじゃん!って盛り上がっていました。二人ともというか、スタッフさんはみんなどちらかというと文系なので、実のところ、その原理については完璧には理解できていないのですが。

でもそのまんま最大視感度って使うよりも、少しだけアレンジを加えようよって話しになったのですが、アレンジの加えようがないので『最高視感度』と少しだけ変えてみました。理由は単純に、「大」よりも「高」の方がかっこいいからです(笑)
それに、せっかくのKmを崩すわけにはいきませんからね。

 

 

・「シュモネ・エスレ」とスター

二曲目の歌詞のテーマやイメージを考え始めたときに、やっぱり一人称僕・二人称君のキャラを女の子が歌うのは萌えるよねって思い、打ち合わせでそれを話したらみなさんも萌えてくれました(主に依田さんが)。最初は反対されちゃうかなぁと不安でしたが、スタッフの方々の食いつきようを強く覚えています。
私としては、女の子が一人称僕・二人称君の口調で哲学的なことをしゃべるのは鉄板だと思っていました。三次元の僕っ子は救いようがありませんが、二次元の僕っ子は至高です。

そして決定的で印象に残るフレーズが欲しい!と番組プロデューサーさんに言われ、ちょうどコピンクス!の裏設定上の舞台はクリスマス的な意味の聖地あたりでした。そこで、あまり宗教色のないように努めながら資料を集めまくった末、「シュモネ・エスレ」という言葉と出会えました。もともと通っていた学校に毎週礼拝があったりしたのですが、とはいえその道のプロではありませんし、詳しく説明するのはここでは避けますが、「生きる」という意味と「18」という意味もあるそうです。こんなすごい言葉あるのか~!とテンションが上がった流れでこれを使わせて下さい!と頼んだらみなさんもOKを下さりました。

そして歌詞に関してもう一つ。

よく使われる「スター」という言葉は、私も好きです。ムービースター、コメディスター、ギャングスター、ハイウェイスター…響きがやっぱりベタですがかっこいいと思います。

でも、私「星」「キラキラ」みたいな言葉が元々大嫌いでした。昔の友達にすごい偽善者がいたんですけど、そうゆうやつに限って「星がきれい」とか言ったり、空の写真とか撮っちゃうんです。そいつらが嫌いだったのもあり言葉としての響きは好きでも、今でも星とか空を「きれいだよ♡」とか言っちゃうのは好きになれません。

余談ですが、友達が流星群の日に付き合ったとかいうただの惚気を報告してきたときはリア充星になれとしか思えませんでした。「月が綺麗ですね」とか「星が綺麗ですね」って言う姿がかっこいいのは夏目漱石だけです。

それに、夜に瞬いている星って、寿命がきて燃えている光が何億光年もの時間を経て私たちの目で輝いていると聞いたことがありました。もしかしたらその輝きを放っている星はすでに無いのかもしれないし、まだ爆発中だとしても死んでいく真っ最中なわけです。
スターと呼ばれる人間は、いつも人々の目に晒されている。それが純粋に楽しいときもあるかもしれないけど、誰にも見られたくないことだってあるに違いないと思います。
それに歌ってくれたのはまだ中学生の女の子。そんな大変なことをこんな早い段階から覚悟を決めているのか…と、彼女を見ていると色々思うところがあり、そして膨大で重量感たっぷりの歌詞を書かせてもらいました。

でも、ただ悲観したくはなくて、純粋に応援したい気持ちの方がウエイト占めています。こんな才能溢れる人間は、普通の生活にはむしろ馴染めないんだろうなーって思い、「色んな悩みもあるだろうけど、あなたはいつだって輝いてるんだから大丈夫だよ」ってニュアンスも伝わるといいなって、思っています。

あと、番組プロデューサーさんには『カリーナノッテ』の歌詞にある「ビアンコ・ロッソ・アマラント」のどれかをせっかくだから今回も使ってよ~!と言われ、「アマラント」をあの場所に使ったら…ね(笑)すごい偶然が起きてしまったわけでした。こちらが驚きました。でも、決して消えていく瞬きではありません。アマラントだけは。

 

―――――――――

この前の『カリーナノッテ』のお話でも触れましたが、コピンクちゃんの声は歌詞が少ないほうがいいお話しを依田さんが早い段階でされていました。書いているときはあまりそこまで考えていたわけではありませんでしたが、こうしてアルバムとなって連続で聴いてみると、一曲ぐらい歌詞が多いものもあっても結果良かったんじゃないかなーと、開き直ることにしました。
その方がきっと『カリーナノッテ』や『リバース』が映えるかもしれないし、もしかしたらコピンクちゃんの新たな魅力も出るかもしれない。まぁその前後に『兎tocome』がゴローとコピンク、それぞれが出てきたので、やたら歌詞の多い曲が増えてしまいましたが…。
本来彼女に不向きな歌詞を、不向きな量で書かせていただきました。

なので、この『最高視感度』、コピンク*楽曲中一番数字が良くはないそうです(笑)
好きにやっていいよって言われて好きにやったわけでしたが、今でもたまにちくちく言われますよ!!でも、それでも納得してやらせてくださった番組プロデューサーさんを始め依田さんやスタッフの方々には、感謝してもしきれません。

みなさんもこの時のことで何か覚えてることがありましたら、DMやピンクスツイッターへのリプライなどで教えてくださいね。

次回は『兎tocome』について。

ゴローverとコピンクverを分けるか一緒にまとめるかは未定ですが、こちら両方ともエピソードが多いです!

 

『最高視感度』が収録されている『コピンクス!メロディーズ~star chart~』は、アップフロントワークスより2013年3月20日から販売予定です。

 

 

2013年3月9日